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現代音楽(芸術音楽)の名曲。おすすめの人気曲

現代音楽と言われても、そういった音楽ジャンルがあること自体知らない、という方が大多数なのではないかと思います。

知識として多少は知っていたとしても、敷居が高く難解なイメージを抱かれている方も多いのではないでしょうか。

クラシックのみならず、ミニマル・ミュージックからアヴァン・ポップ、フリージャズ、ノイズ・アヴァンギャルドにいたるまで、現代音楽の影響は多くの分野で根付いています。

そんな現代音楽の名曲とされる楽曲を軸として、幅広い分野における楽曲を選出してみました。

現代音楽(芸術音楽)の名曲。おすすめの人気曲

The HoursPhilip Glass

いわゆるミニマル・ミュージックと呼ばれる分野の立役者の1人であり、現代音楽家の巨匠であるフィリップ・グラスさん。

アメリカはメリーランド州ボルチモア生まれのグラスさんは、音楽大学の名門中の名門であるジュリアード音楽院で学び、クラシック音楽の教養を持ち合わせながらも、前衛芸術から映画音楽、ポップミュージックにいたるまで数多くの分野で活躍している、音楽史にその名を刻む鬼才アーティストです。

今回はグラスさんが手掛けた多くの映画音楽の中から、2002年に公開された『めぐりあう時間たち』の表題曲を紹介します。

重厚なストリングスの中で、美しいピアノのフレーズがミニマルかつ複雑にリフレインしていく様は、まさに異なる時間軸を描いた映画本編のように、時の流れを表現しているかのよう。

繰り返し聴きたくなってしまいますね。

現代音楽やミニマル・ミュージックは難解な作品も多いですが、まずはこういった美しいピアノ曲から現代音楽家の作品に触れてみるというのもいいでしょう。

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4分33秒John Cage

現代音楽というジャンルそのものを知らなくとも、沈黙の中で生じる「意図的ではない音」によって構成されるこちらの『4分33秒』は、ご存じの方もいるでしょう。

インターネットが普及して、動画サイトなどでこの曲の存在を知ったという方も多いのでは?

1952年にアメリカの音楽家、ジョン・ケージさんが作曲した『4分33秒』は、ケージさんにとって最も有名な作品の1つであり、2020年代が過ぎた今も曲に対する論争が続けられているほどに、世界中のアーティストに影響と衝撃を与えた問題作です。

演奏時間のみが定められ、演者は本来の意味での演奏はせず、観客の発する物音など、偶発的な音がそのまま「作品」となる手法は、当然ながら賛否両論を生みました。

この作品に込められたケージさんの思想や主張などは、短い文章の中で語れるようなものではありませんが、決して単なる一発ネタなどではないことは強調しておきましょう。

クラシック音楽を学んでいた音楽少年が、どのようにしてこのような実験的な音楽を生み出すまでに至ったのか。

興味のある方は、ぜひケージさんという人間について調べてみてください。

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断ち切られた歌Luigi Nono

イタリアはヴェネツィア出身のルイジ・ノーノさんは、戦後の現代音楽~前衛音楽において中心的な役割を果たした作曲家です。

20世紀ドイツ最大の交響曲作家とも言われるカール・アマデウス・ハルトマンさんが、バイエルン放送と共同で主催した現代音楽の演奏会「ムジカ・ヴィーヴァ」でその名を知られるようになったとも言われており、いわゆるセリエル技法を習得した初期から電子音楽に興味を持ち始めた中期、新たな地平へと進んだ後期で作風が違うことでも有名な存在ですね。

エドガー・ヴァレーズさんやカールハインツ・シュトックハウゼンさんといった先鋭的な作曲家と交流しながらも後に決別している、という点もノーノさんが独自の道を歩むタイプであることを物語るエピソードと言えそうです。

共産主義者でもあり、政治的な思想を作曲へと落とし込むタイプのノーノさんが1955年から1956年にかけて作曲した『Il canto sospeso』は、彼の代表作と言える声楽作品、カンタータです。

『断ち切られた歌』という邦題のこの作品は、戦時中の抵抗運動の闘士たちによる遺書からインスパイアされ、十二音技法と独自のセリエル技法を駆使したもので、当時大ヒットを記録したそうです。

音だけでなく、その背景にあるメッセージ性はぜひ知っておくべきものと言えるでしょう。

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Poème ElectroniqueEdgard Varèse

エドガー・ヴァレーズさんは、フランス生まれで後のアメリカ国籍を取得した作曲家です。

インターネットなどでヴァレーズさんの写真を探せば、いかにも芸術家といった感じの気難しそうな風貌を確認できるでしょう。

決して多作なタイプではありませんが、打楽器の多用や電子楽器の導入など、その前衛的なスタイルは多くのアーティストに影響を与え、アンドレ・ジョリヴェさんや周文中さんといった、世界的に知られている作曲家がヴァレーズさんの弟子であることからも、その影響力が分かるというものでしょう。

今回紹介している楽曲は邦題を『ポエム・エレクトロニク』という作品で、1958年に開催されたブリュッセル万博のフィリップス館において演奏するために作曲されたものです。

通常の音階を持った音楽とは全く違う、聴く人によっては単なるノイズのコラージュにしか聴こえないであろう作品ですが、その先鋭性は先述したように後続の作曲家に多大なる影響を及ぼしています。

個人的には、タイトル通り「電子による詩」として味わえばいいのではないかと考えます。

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Un tranquillo posto di campagna, Pt. 11Ennio Morricone

2020年7月26日、映画音楽の歴史において最も重要な作曲家の1人であるエンニオ・モリコーネさんが91歳の生涯を終えました。

1928年にイタリアはローマで生まれたこの偉大なマエストロは、1960年代初頭に映画音楽家としてデビューして以来、映画史に残る素晴らしい楽曲を生み出し続け、映画の添え物ではなく、時には主役級の輝きを放つスコアを提供し、名画の誕生に貢献したとも言えるでしょう。

そんなモリコーネさんは『荒野の用心棒』などの初期のマカロニウエスタンにおける哀愁漂う名曲、または『ニュー・シネマ・パラダイス』などのメロディアスで美しい作風以外にも、実験的な音楽家としての顔を持っています。

今回紹介している楽曲は、1969年に公開された『怪奇な恋の物語』のサウンドトラックで、モリコーネさん自身が所属していた即興演奏グループによる現代音楽ど真ん中のサウンドを聴けば、一般的なモリコーネさんのイメージはがらりと変わるはずです。

モリコーネさんによるトランペット演奏も含まれており、複雑怪奇でトライバル、原始的な音の祭典のような曲も作ってしまうマエストロの新たな一面を、ぜひこの機会に知ってください!

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海の音調への練習曲Salvatore Sciarrino

何はともあれ、この楽曲については演奏動画をご覧いただきたいです。

カウンターテナー、フルート四重奏、サクソフォン四重奏、パーカッションという編成に加えて、なんと100本のフルートと100本のサクソフォンで表現する壮大な音響実験の如き作品なのですね。

200人以上の奏者がステージに立つ姿だけでも壮観ですが、そもそもこれをやろうという発想自体に感服してしまいます。

原題は『Studi per l´Intonazione del Mar』というこちらの楽曲を生み出したのは、イタリア出身の現代音楽作曲家、サルヴァトーレ・シャリーノさん。

基本的に独学で作曲を学ばれたそうで、常識的なクラシック音楽の理論では絶対に表現できない、シャリーノさんの独創的な作品群は高く評価されています。

こちらの楽曲も、いわゆるメロディアスで美しいフレーズなどは皆無、まさしく海そのものが生み出す音の調べであり、できればCD音源ではなく実際にホールで体験すべき音世界であると言えましょう。

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